GALAXCITY はやぶさ DAY イベントレポート《ボランティア・インタビュー編》
2022年1月8日(土曜)、はやぶさ2帰還1周年として3人の専門家による講演会をギャラクシティ西新井文化ホールにて開催しました。多くのボランティアの方々の協力によって、素晴らしい講演会となりました。ボランティアの中には、宇宙に関する分野を勉強される大学生も参加されていました。そこで、専門に近い分野のことを、各先生方に聞いていただくインタビューを講演会直前に行いました。そのレポートです。
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★その1 飯島沙織さんによる吉川真先生へのインタビュー
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飯島 沙織(以下 飯島):1月8日行われた「おかえり!はやぶさ2 1周年記念イベント」の実行委員を務めました大学生の飯島沙織です。私は理系専攻ではなく、ホスピタリティを専攻している、どちらかというと文系の人間です。
イベント当日、講演会の前に登壇される先生方にインタビューをする機会を頂き、私は吉川真先生にお話しを伺いました。私は初代はやぶさプロジェクトに魅了され、宇宙へ興味を持ったので、はやぶさ・はやぶさ2の両方に関わってらっしゃる吉川先生とお話することができ大変嬉しかったです。
星への興味は小学生の頃から
飯島:まずなぜこの宇宙の道を志したのか教えていただきたいです。
吉川 真 先生(以下 吉川):元々小学生高学年の頃に星に非常に興味を持ちました。親にねだって望遠鏡を買ってもらい、私の実家が栃木県・栃木市という場所で田舎で夜空が暗く、星をよく見ていていました。そこからずっと星に興味はありましたが、中学校、高校では天文関係のクラブにははいらず、運動をずっとやっていました。大学では物理が好きで、理系の道へ進みました。大学3・4年生の専門を選ぶ際に、物理学科、天文学科、地球物理と言ったいくつか物理の学科があったのですが、その時に1番大きいのは天文だろうと思い、宇宙の研究をしようと思い、そこから本格的に宇宙の研究をはじめました。
実は同じ技術
飯島:人工衛星と宇宙旅行が今後関わっていく可能性や活かせることはあるのでしょうか。
吉川:最近、前澤さんであるとか、普通の、宇宙飛行士でない人がどんどん宇宙に行っていますけれども、ただお金がたくさんかかるみたいですが(笑)。もちろんロケットで地球の周りを回るというのと人工衛星を打ち上げるとうのは同じ技術ですからね。ただ違いは人が乗って生命維持できるかどうかという技術が必要になってくるので、より難しい技術になります。我々の惑星科学では無人の探査機を惑星・小惑星等に送っていて、そういった技術がゆくゆくは人が乗った宇宙船を火星に送るといった技術に関わってくる、関係してくると思います。人工衛星の技術が宇宙に出かけていく技術に非常に役に立つということになると思います。
#未知 #挑戦
飯島:それでは最後に宇宙を目指す中高生にメッセージをお願いします。
吉川:宇宙に限りませんが、未知なことがたくさんあり、我々の知らないことがたくさんあります。例えば今日ははやぶさ2の話ですが、はやぶさ2の行ったリュウグウは到着するまでは全く未知の世界でほんの少しだけ地上の望遠鏡で観測して情報があったけれど、ほんの少しの情報しかなかったんです。行ってみたら色んな発見、新しい発見もありました。そういったリュウグウだけでなく、宇宙は本当に未知なことが多いので、是非そういったことに挑戦していってほしいと思う。挑戦するためには新たな技術を開発する必要があって、探査機のような技術でもいいですし、地上の望遠鏡に特別な装置を取り付けるといった装置の開発、とにかく未知なことにどんどん挑戦していってほしいなと思います。
インタビューを終えて
宇宙分野は漠然とすごい方々が集結していると思いがちでした。ですが、学生時代のお話を聞き、特定の分野だけに没頭するより、吉川先生のように部活は運動系だったり、色んな事に触れていくのが大切だなと感じました。(飯島)
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★その2 加藤大樹さんによる橘省吾先生へのインタビュー
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加藤大樹(以下 加藤):1月8日に行われた「おかえり!はやぶさ2 1周年記念イベント」の実行委員を務めた、大学生の加藤大樹です。大学では物理学を学んでいます。 今回はイベントで講演された3名の専門家のうち、隕石の起源や生命の謎を研究している東京大学の橘省吾先生にインタビューをしてきました!
惑星に興味を持ったきっかけは、探査機ボイジャー
加藤:どうしてこのような研究の道に入ったのか、きっかけなどを教えてください。
橘 省吾先生(以下 橘):元々太陽系の惑星に興味を持ったのは小学校1年生の頃です。ボイジャーという探査機が惑星の写真をたくさん送ってくれたのを見て好きになったんです。だから大学でもそういうのができるところに行こうと思って理学部に進んで卒業研究をやってみたらなんか面白くて。全然研究者なんて考えたこともなかったんですけど、その道に進むことに決めました。
加藤:たくさんある惑星に関する研究分野のなかで、なぜ地学分野を選んだのでしょうか?
橘:太陽系の惑星の色の違いにずっと興味を持っていました。すると単なる物理だけではだめで、化学的な要素や物質の要素も入ってくることになり、自然と「地球科学」や「惑星科学」になります。地学というのは結局物理や化学も必要な総合的な科学です。地学を志向していたわけではなかったけど、結果的にそういう方向に進むことになりました。
コロナ禍でも、物事のポジティブな面を
加藤:コロナ禍のなか、海外でのカプセル回収となりましたが、やはり苦戦されたのでしょうか?
橘:(カプセル回収のための)オーストラリア入りに関しては、コロナの影響が少なからずありました。実は直前までバタバタ焦りながらやったんですけど、いろんな準備はやってきたし、チーム内の意思疎通もちゃんとできていたので、最後はきっと何とかなるよねという感じで当日を迎えました。
加藤:私自身もそうなのですが、このコロナ禍でやりたいことが思うようにできない人へのアドバイスはありますか?
橘:特にこういう仕事をやっていてよく思うんですけど、できる限り物事のポジティブな面を見るとか、ちょっと前向きに考えるとか。科学なんて、誰も知らないことを新しく知っていくもので、目の前は何も見えないところなんですよ。そういうところを進んでいくので、なるべく後ろ向きにならないのがいいのかなと思っていて、このミッションもそうやっているんです。確かにコロナ禍でいろんなことができなくなるとかあるんですけど、でもそれが逆に何か別のものを始めるとか、別のことを考えるとか、そういう風にする時間もできるかもしれないという捉え方をするといいと思います。僕はコロナ禍で確かに大変なんだけど、新しい生活スタイルのいい面もあると思って過ごしています。
不思議だな」という気持ちを大事に。いつかどこかで芽吹くかも?
加藤:最後に、宇宙に憧れる足立区民や子どもたちにメッセージをお願いします。
橘:お子さんとか中高生とかにお話しするときに割とよく言っているんですけど、「不思議だな」とか「これを知りたいな」という気持ちは大事にしてほしいなと。あとよく考えるということが重要かなと思っています。勉強してこんなことがわかったとか、テストで点が取れるようになったとかっていうのももちろん重要な基礎体力です。ただそこから前に進むために自分で考えて行動したり、自分で考えてなんか不思議なことを見つけたりしておくと、その瞬間には解決しないかもしれないけど、そういうのって自分の体に種のように植えられていて、いつかどこかで芽吹くかもしれないので。そういう心構えが重要かなと、こういう仕事をしていて思います。
インタビューを終えて
ギャラクシティでは、観望会やGがくえんの活動など様々なイベントが行われています。空を見上げたら、望遠鏡を覗いたら、「思っていたのと違う見え方だぞ?」と感じることがあるかもしれません。橘先生の話にもありましたが、予想と違っていたときなど「不思議だな」と思ったときは、そのままスルーせずに何かアクションを起こしてみるようにしたいですね。
そして「地学というのは結局物理や化学も必要な総合的な科学です。」という話がありました。私は物理学専攻ですが、化学や数学などが必要になることがあり時々苦戦しています。中高の科目では物・化・生・地と区別されますが、大学では結局分野を跨ぐことが多いので、ぜひあまり分野を絞り込まずに学習してみてください。(加藤)
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★その3 野口雄大さんによる津田雄一先生へのインタビュー
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野口 雄大(以下 野口):1月8日に行われた、「おかえり!はやぶさ2 1周年記念イベント」の実行委員を務めた、野口雄大です。大学では工学について学んでいます。 イベントでは、3名の専門の先生の講演会が行われました。私は津田雄一先生のインタビューを担当させていただきました。
モノづくりと乗り物が好き
野口:どうして宇宙系に進もうと思ったんですか?
津田 雄一先生(以下 津田):高校の時に、自分の進路を真剣に考えたんですよ。モノ作りと乗り物が好きだったんですよ。その2つのキーワードがあって、将来どんな仕事をしたいかなと考えたときに、究極の乗り物、地球の重力圏の外に飛び出して探査するような探査機を小さいころから知っていて、興味があったのでそういうものを作りたいなと思った。
野口:別の夢はあったんですか?
津田:実はもう1つ夢の選択肢があって、飛行機のパイロットがあったんだよ。モノを作るか自分が操縦するかで、よく考えたときに、作る方が向いているかなと思って、そういう大学を調べたときに、航空宇宙工学という学問があることを知って、それがある大学を調べ、当時あんまりない中でそれがあるのが東京大学だったんだけど。あとほかにいくつか選んでそこを目指した。
大学での出会い
津田:大学に入って、宇宙工学のことをやっている先生に出会い、その研究室に入った。当時はコンピューターシミュレーションしかない。普通は大学に入って宇宙の勉強はするんだけれど、宇宙のモノづくりとは程遠いと思っていたんだけれど、その先生のところだと、手のひらサイズの人工衛星(CubeSat)を作ろうという活動が始まった。当時はそんなコンセプトはなかったんだけど、僕らの研究室が作ったんだよね。こんな小さい人工衛星なら学生でも作れるんだ、というのがだんだんわかってきて、それを大学の時に作り始めて、本当は当時、物作りを本気でやりたかったから、大学よりもすぐ就職しちゃうとか、研究所、宇宙科学研究所というところも東大から行けるんだけど、そっちに行っちゃってそこでモノづくりとかにかかわりたいなって思ってたんだけど、大学の研究室の人工衛星作りがほんとに楽しくなっちゃって、卒業までずっとそこにいて、打ち上げまでかかわることができた。
野口:宇宙飛行士になりたいとは思わなかったんですか?
津田:宇宙飛行士か~。思ったんだけど現実味がなかったんだよな。なんか当時、ほとんど時々しか募集されなくて、すごく興味はあった。高校1年生くらいの時に秋山さんが、そのすぐ後に毛利さんがいって当時テレビにかじりついてみていた。
僕はどっちかっていうと操縦なんだよね。テレビで見る宇宙飛行士の活動って面白いんだけど、どちらかっていうと、背景に映っている機械とかスイッチの方が好きで、あれを押したらどうなるんだろうとか。まあ、そういうのがあって、物作りとかあるいは、(飛行機の)操縦とかみたいな方がいいなと思った。今はね、操縦みたいなことをし始めて現実味があるんだけど、僕にとっては、その当時は現実味がなかった。
複雑なことも1つ1つ細かく見ればシンプルなこと
野口:宇宙にあこがれている子供たちにメッセージがあればよろしくお願いします。
津田:宇宙そのものも夢があるけれど、宇宙に行くものを作るというのもすごくチャレンジがあって面白くて、まだまだやらなきゃいけないこと、やれることがいっぱいあると思っています。それは、はやぶさ2とかも外見上すごいことをやったように見えるんだと思いますけども、1つ1つそれをどうやってやったのかということを細かく見ていくと1個1個はすごくシンプルな物理現象だったりメカニズムの組合せでできていることがわかると思います。着陸1つとってもそう。そういうところに目を向けて1段深く見ていただくともっと面白く探査機だったりロケットだったり宇宙に行く乗り物の仕組みがわかるんじゃないかと思います。それと、僕らがやっている努力も理解してもらえるかなと思って、ぜひそういうところを注目しながら宇宙工学というところにちょっと注目してもらえればいいかなと思います。
インタビューを終えて
現在は当たり前のように大学で衛星開発が行われていますが、当時は試行錯誤の繰り返しで行われていることが分かりました。実際に衛星を開発している方とおはなしすることで新たな発見がありました。今後の衛星開発に役立てていきたいと思います。(野口)
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